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研修講座のご案内

令和6年度 第36回 冬季研修講座のまとめ

2025年01月29日(水)更新

家庭学習の導入・やる気を上げる取り組ませ方

はじめに

 本教育研究所では、教職員の研修への寄与と、資質向上を目的に研修講座を開催してきました。今回は「家庭学習の導入・やる気を上げる取り組ませ方」というテーマのもと、家庭学習につなげるための事例紹介と意見交流という内容で講座を開催いたしました。伊達市立伊達小学校 藤井 健 先生、登別市立西陵中学校 高橋 孝平 先生、登別市立緑陽中学校 菅原 麻衣 先生、登別市立登別小学校 中村 章人 先生に実践発表をお願いし、ハイブリッド形式(会場とZoom配信)で講座を行いました。以下は、講座の内容をまとめたものです。多くの先生方にご活用いただけると幸いです。

研修講座の様子

 会場・Zoomを合わせて50名を超える先生方に参加いただき、開催することができました。2時間ほどの講座でしたが、参加された先生方も、本教育研究所所員にとっても興味関心が高い内容となりました。 
 4名の先生方の実践発表の後、会場およびZoomで各学校における家庭学習の取組の様子を交流しました。短い時間ではありましたが、各学校の課題についても大変活発に交流されていました。それだけ「家庭学習」というテーマは、各学校、先生方にとって重要な課題だということを改めて感じさせられました。実践発表の概要は以下のとおりです。

「伊達小学校における家庭学習の取組」 伊達市立伊達小学校 藤井 健 先生 

 全国学力・学習状況調査結果より、平日の学習時間に不足があり、テレビゲームの時間が多い児童の割合が高いという状況があります。その状況を踏まえて3つの取組を行っています。
 1つ目は「家庭学習の手引き」を年度始めに配付し家庭に啓発しています。また、学年通信等を活用して、宿題や家庭学習の仕方について児童や保護者へ周知しています。
 2つ目は「家庭学習強調週間」の設定です。中学校区での共通の取組として年3回位置づけています。中学校の定期テストに合わせて設定しています。この取組を通して家庭学習の意義や取り組み方について、改めて指導する機会としています。
 3つ目は「学び直し月間」の設定です。7月・11月・3月に学び直し月間を実施し、「知識・技能」の確実な定着を図っています。自らの学習を振り返り、個人の弱点克服につなげたいと考えています。
 学力向上には、家庭学習は不可欠です。家庭学習の習慣化のためには、児童への意欲付けや基本的生活習慣、家庭への啓発など継続した取組が必要だと考えています。

登別市立西陵中学校における「フォーサイト手帳」活用ついて  登別市立西陵中学校 高橋 孝平 先生

 主体的に学習に向かい自己の力を高めるための取組として、令和4年度より「フォーサイト手帳」を活用しています。生活面や学習面にPDCAサイクルをあてはめて行動していくことで、自立した学習者に育てていきたいと考えています。生徒には、自主学習(家庭学習)の土台となる生活リズムを整えるため、週の予定や時間割を把握する機能として活用するとともに、1週間の学習や生活を振り返ることで、自らスケジュール管理をする力を身に付けてほしいと考えています。また、目標や計画を立てて実行し、その後に改善する力を育み、主体的に考える力を身に付けてほしいとも考えています。
 手帳にはPDCAサイクルが回しやすいような工夫があります。生徒たちは①帰りの会で計画を立てる。②計画を実行する(変更することもあり得る)。③振り返りを行う。④振り返った内容を翌日以降にいかすということを繰り返し行っています。
 生徒たちが手帳を効果的に活用できるように、手帳を活用する目的やその役割などをオリエンテーションや「フォーサイト通信」を作成して指導しています。少しずつ成果が見え始めていますので、継続してこの手帳を活用しながら、生徒たちが計画から行動できるように研究していきたいと思っています。

「学力向上を目指して」 登別市立緑陽中学校 菅原 麻衣 先生 

 家庭学習指導のねらいとしては、生徒達の基礎基本の定着はもちろんのこと、特に自己調整力を伸ばしてあげたいと考えています。そのために今年度行った取組は3つあります。
 1つ目は「家庭学習記録表」による学習記録です。登別市立登別小学校の取組を活用し、全学級で行っています。全学級の取組の状況について、職員室内のモニターで掲示し全職員で共有できるようにしています。この取組から、記録表の記入が定着している生徒は少しずつ学習時間が伸びていることが分かりました。ただし、保護者がそれを見る機会がないので、タブレットの持ち帰りを勧めていきたいです。
 2つ目は「学習のてびき」の作成と啓発です。生徒がいつでも見ることができるように、簡略化して、先ほどの「家庭学習記録表」に記載しています。家庭学習の取組内容については、家庭学習の定着を優先しているので幅をもたせています。年度当初に学習時間等も指導していますが、生徒・保護者ともに理解していない方もいるので、継続的に啓発していく必要があります。
 3つ目は教科担任や学習委員会との連携です。教科担任との連携については、教科連絡係が教科担任に家庭学習を提出し、チェック後返却する形をとりました。それにより教科担任は、生徒の取組を直接把握し指導でき、生徒の意欲向上につながりました。学習委員会では「予想問題の作成」や「学習ポスターの掲示」などの取組を行っています。これらの取組も工夫しながら継続していきたいと考えています。

「デジタル家庭学習チェックシート」の取組  登別市立登別小学校 中村 章人 先生

 本校の学力向上プランより、家庭学習の取組率90%を目指して取り組んでいるところです。子供の学習記録について、デジタル化を行うことにより、見える化と業務改善の意味を込めて取り組んでいきました。さらに、「できるようになる=レベルアップ」の概念を取り入れ、グラフやキャラクターに反映させること(ゲーミフィケーション)で、子供たちに楽しみながら記録させるように工夫しました。この活動によって、自分の学びをより良くしていこうとするモチベーションにつなげていきたいと考えています。
 「デジタル家庭学習チェックシート」の取組の結果、めあてと振り返りの習慣付けの素地ができたことや自身の学習傾向の把握ができる児童が出てきたこと等の成果が表れてきています。半面、家庭や児童による取組の二極化が起こってしまうことは避けられない課題かもしれません。
 今後の展望としては、家庭学習の取組について数値で示す指標は必要だと考えています。ただし、数値の妥当性を担保するために、デジタルの取組を今後も継続する必要性があると考えます。また、保護者アンケートから、3割が家庭学習について「不十分」と評価していることから、教師や保護者の認識の向上が必要です。最後に、家庭学習に関わらず、自身の変容に気付き自己調整を行っていけることが重要です。だからこそ、学級や学校の取組と組み合わせることによって、より多くの気付きにつながっていくと考えています。

参加者の声

  • それぞれの小中学校の取組を知ることができた。また家庭学習の取り組ませ方については、「目標」「見える化」「自己調整力」「教師の声掛け」などのワードが改めて大事であることを再確認できた。
  • 子どもたちへの意欲喚起、保護者への啓発、自己管理能力の育成等のヒントをたくさんいただけました。特に実践の内容だったのでやってみたいと思う内容を得ることがありました。
  • 学校としての取組や、家庭地域との連携がとても大切だと感じた。中村先生のスプレッドシートのように、子どもたちの意欲につながる取組を模索し実践していきたい。
  • 各学校で家庭学習の取組を充実させるために、様々な工夫をしているとともに、共通して言えるのは家庭との連携や協力をさらに充実させる面については、苦労していることがわかりました。
  • 家庭学習のやる気を上げるためには、内容について評価していくことで、量(時間)にもつながっていくのではと考えました。中学校の事例で、学習委員会の生徒に掲示物を作成してもらうということがありましたが、周囲の生徒も巻き込んで学びに向かうことができそうで取り入れてみたいと思いました。フォーサイト手帳の事例からは、1週間が一目で見られる(見開きで見られる)形なので振り返って次の週の計画を立てやすいと感じました。
  • 各学校の取組や困り感を共有することができてよかった。発表を聞くだけでなく、参加者同士の交流ができたのも良かったです。Zoom参加者や意見質問も丁寧に拾っていただき、ありがとうございました。
  • 発表者の先生からの情報提供、大変ありがたかったです。私としては、「自主性」「自己調整力」がキーワードになりました。振り返りの大切さを感じました。ただ、家庭学習はやればいいものではなく、短時間でも優れた学習であれば価値がありますし、長時間の取組でもだらだらやっていると、価値はないと感じます。高橋先生から説明のあった、授業とのリンクを意識することがとても有効だと感じました。私も取り入れていきたいと思います。どうもありがとうございました。
  • 家庭学習の取組について、これまでずっと様々な悩みがありましたが、今回の講座でほとんど解決することができました。紙かICTか、質と内容の向上にはどうしたらよいか、取組の習慣化、など、自分なりにこれからどう取り組んでいくべきかが明確になりました。どのような取り組み方であっても、児童や地域の実態は変遷するものであるから、トライアンドエラーを繰り返しながらも、児童の主体性や向上心、プランニング能力の育成のために、今後も継続して取り組まなければならないと感じました。深い学びの場を提供してくださり、本当にありがとうございました。
  • それぞれの学校で、家庭学習習慣を定着させ、自己調整しながら学力をつけていかせるために工夫していることがわかった。すぐに効果がでることがあるというわけではないが、色々工夫しながらやっていくことが大事だと感じた。ログを残すことの重要性を改めて感じた。
  • 参加してよかったです。各学校の取組を聞き、さまざまな工夫と配慮があることが具体的にわかった。そして、家庭学習を充実させるための事例紹介と意見交流があり、非常に有意義でした。大切な自己調整力を育成するための具体的な方法が示され、家庭学習の取組を強化するためのヒントを得ることができました。個人的には、まずは机の前に座る習慣をつけることの重要性を再認識しました。小さなステップから始めて、学習習慣を身につけることが、子どもの成長に大きく寄与することを実感しました。

おわりに

 家庭(自主)学習の取組について、いくつかの事例を紹介するとともに、各学校の状況を交流することで、自校の取組に活かしてもらうことが今回の研修講座の大きな目的でした。家庭学習の重要性については、先生方が十分にわかっていることでも、なかなか子供たちには伝わっていかないというのが現状ではないでしょうか。
 これからの時代を生きる子供たちにとって、「参加者からの声」にもあるように「自己調整力」の育成が非常に重要です。つまり、自分で考え必要だと思ったことを学んでいくことが求められています。だからこそ、子供たちにとって「必要」と思わせるような仕掛けも、私たちの大切な役割の一つです。そのためにも、多くの先生方の様々なチャレンジが、胆振全体のレベルアップにつながっていくものと考えています。
 本講座で学んだことが、今後の皆様のご指導等に活用されていくことを願っております。実践発表をしてくださった4名の先生方、そして受講してくださった皆様に心から感謝申し上げます。

 

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